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東京高等裁判所 昭和38年(ネ)2026号 判決 1977年10月27日

補助参加申出人

小森小十郎

右訴訟代理人

重田九十九

控訴人

犬山銀次郎

右訴訟代理人

竹下甫

長岡邦

被控訴人

関キタ

右訴訟代理人

新井嘉昭

外二名

主文

本件補助参加の申出を棄却する。

参加申出によつて生じた訴訟費用は補助参加申出人の負担とする。

理由

補助参加申出人代理人は、参加の趣旨として、参加申出人は控訴人を補助するため本件訴訟に参加する旨陳述し、参加の理由として、

本件訴訟の対象物件たる土地は控訴人の所有であるところ、右土地につき控訴人から参加申出人小森小十郎、訴外玉置興業株式会社、同今川秀治、被控訴人へと順次各所有権移転登記がなされていたので、控訴人はこれらの者を相手方として右各登記の抹消登記手続を請求する本訴を提起したところ、控訴人と被控訴人を除くその余の相手方との間において、参加申出人、訴外会社及び訴外今川は、いずれも控訴人の本件土地所有権を認め、各自抹消登記手続をなすべき旨の裁判上の和解が成立した。

そこで、若し控訴人が本件訴訟につき敗訴することがあれば、参加申出人の前記和解にもとづく抹消登記手続をなすべき義務の履行は不能となり、損害賠償の請求を受けるおそれがあるので、参加申出人は、控訴人を補助するため本件訴訟に参加することを申し出る。

と述べた。

被控訴人代理人は、

参加申出人の本件補助参加については異論があり、該申出は、許されるべきでない。すなわち、控訴人と参加申出人らとの間で成立した和解の内容は、参加申出人らが自らの名義とされた所有権移転登記についてのみ錯誤を原因として各抹消登記手続を承諾することを約したにすぎず、被控訴人が経由した所有権移転登記の抹消についての被控訴人の承諾は、控訴人の責任においてこれを得べきことには変りはなく、その点についてまで参加申出人らの義務とはされていない。したがつて、控訴人が本件訴訟に敗訴しても、それは控訴人の責任であつて、参加申出人らに対し何ら損害賠償の請求をなしえないのである。それ故参加申出人らは、本件訴訟に参加しうる法律上の利害関係を有しない。

と述べた。

よつて、審案するのに、参加申出人主張の事実は、本件訴訟記録に徴し、これを認めるに十分である。

ところで、民訴法六四条の規定する補助参加は、訴訟の当事者でない第三者がその訴訟の一方の当事者を勝訴させることによつて自己の利益を護るためその訴訟に参加する制度であるから、同条にいう「訴訟ノ結果ニ付利害関係ヲ有スル第三者」とは、必らずしもその訴訟の判決の効力が直接及ぶ関係にある者であることは必要でないが、判決によつて私法上又は公法上の地位に法律上何らかの影響を受け得る関係にある者でなければならない。いいかえれば、参加人の私法上又は公法上の権利義務その他の法律上の地位が論理上当該訴訟において判断さるべき権利関係の存否に依存する関係にあることを必要とするものと解するのが相当である。

これを本件についてみるのに、もともと、本件訴訟は、本件土地について控訴人から参加申出人、訴外玉置興業株式会社、同今川秀治、被控訴へと順次経由された各所有権移転登記をめぐり、控訴人が自己の所有権及び右各登記の原因たる所有権移転行為の不存在もしくは無効を主張して、これらの者に対し右各登記の抹消を訴求したものであるところ、控訴審である当裁判所において、控訴人と参加申出人、訴外会社及び訴外今川の三名との間に参加申出人の主張するような内容の裁判上の和解が成立し、控訴人と被控訴人との間にのみ訴訟が残存するに至つたものである。したがつて、現在の権利関係の公示を目的とするわが不動産登記法の下においては、現在の所有登記名義人である被控訴人との間の本訴において控訴人が勝訴し、被控訴人の所有権移転登記が抹消されない限り、これに先行する参加申出人らの所有権移転登記を抹消することができず、前記和解契約により控訴人及び参加申出人らが所期した目的が達せられないことは参加申出人の主張するとおりである。しかし、右和解契約により確定された控訴人の参加申出人らに対する各所有権移転登記の抹消登記請求権及びこれに対応する参加申出人らの抹消登記義務は、本件訴訟の訴訟物である控訴人の被控訴人に対する所有権移転登記抹消登記請求権の存否により決せられるべき関係にあるものではない。問題は、控訴人が本件訴訟に敗訴し被控訴人に対する前記抹消登記請求権が否定された場合、これに起因して参加申出人が控訴人に対する関係において前記和解契約上何らかの不利益を受ける立場にあるかどうかである。この点について参加申出人は、もし控訴人が本訴で敗訴すれば、参加申出人の抹消登記義務の履行が不能となり、控訴人から損害賠償の請求を受けるおそれがあると主張するが、控訴人敗訴の結果、本件土地について被控訴人の所有権移転登記の抹消ができず、ひいて参加申出人の抹消登記が実現できないとしても、前記和解契約において被控訴人の抹消登記の承諾を得ることにつき参加申出人らの責任を定めた条項は存しないのであるから、これをもつて参加申出人の責に帰すべき履行不能として控訴人に対し損害賠償の責任を負うべきいわれはない。また、右和解契約においては、参加申出人が控訴人に対し片務的に抹消登記をなすべき義務を定めたものであり、これと対価的関係に立つ権利の設定については何らの定めもないのであるから、参加申出人の右抹消登記義務の実現が妨げられることによつて参加申出人が本来得べかりし権利ないし利益を失うという関係も存しない。

このようにみてくると、参加申出人は控訴人と被控訴人間の本件訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する第三者とは認め難く、補助参加の要件を具備しないものといわなければならない。

よつて、本件補助参加の申出は、その理由がないものとしてこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法九四条、八九条を適用し、主文のとおり決定する。

(渡部吉隆 渡辺忠之 柳沢千昭)

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